「将来どんな家に住みたいですか?」と聞かれたとき、「明るい家」と答える人はたくさんいます。部屋の中の明るさは気持ちにも大きく関係するので、できれば明るい部屋で気持ちよく過ごしたいですよね。
しかし、照度(lx:ルクス)の数値が高い部屋であっても、壁が暗い色だと明るい印象は受けないものです。「照度=明るさ」ではないわけです。
照明器具のメーカーでもあるパナソニックでは、この問題を解決するため独自の指標を設けました。空間照度を示す「Feu(フー)」という指標です。この指標の意味や、これを使うメリットをご紹介していきます。
「空間照度」とは
私たちが普段「明るい」「暗い」というときに、何か基準があるわけではありません。感覚を口にしているだけで、眼球の中にある光彩の状態によっても感じ方が大きく異なってきます。
ただ、部屋の照明計画を練る際は感覚だけに頼るわけにはいきません。明るさが足りているということを確認できる指標が必要です。従来、この指標には床面照度や机上面照度が用いられてきました。
しかし、スポットライトを当てて床面だけを明るくしても、壁が暗いと部屋全体が暗く感じます。これでは指標として適切ではありません。
そこで生まれた考え方が「空間照度(Feu)」です。「Feu」は空間の明るさを数値に置き換えて示します。フランス語で「火」「炎」を示す言葉から名付けられました。この指標を使えば、空間の明るさに対する感じ方を決まった数字で示せます。
パナソニックが生み出した空間照度指標「Feu」
ダイニングテーブルに設置する照明器具について考えてみましょう。スポットライトのように光の範囲が狭い照明だと、照らされた部分の照度は高くなりますが、部屋全体の明るさはあまり得られません。
天井にも光があたる全方位型の照明器具を使うと、テーブル面の照度は落ちるものの、部屋全体の明るさを増すことができます。同じ照度でも、空間照度(空間の明るさ)が異なってくるわけです。
パナソニックが開発した空間照度指標「Feu」は、天井や壁、床全体の照度を総合的に判断し、数値化します。これによって感覚だよりだった明るさを客観的に捉えることが可能になりました。
空間照度がわかるとどのようないいコトがあるのか
空間照度を数値化して把握すれば、照明器具の配置や光量の設定がしやすくなります。間接照明の設計にこれを用いれば、「思ったより暗い部屋になって困った!」ということになりません。
もちろん、むやみに明るすぎて落ち着きのない部屋になるという事態も防げます。無駄な照明器具や、それに必要な電気代を削ることにもつながるわけです。
空間照度の計算方法
「Feu」を求める公式は、「1.5×色モード境界輝度の0.7乗」です。
「色モード境界輝度」とは、ある明るさの部屋の中に物体を配置し、その輝度(輝きの強さ)を徐々に高めていったとき、ただのものに見えていた物体(物体色モード)が発光しているように見えだす輝度のことです(光源色モード)。
「色モード境界輝度」の算出は、素人にかんたんにできるものではありません。パナソニックのオフィシャルサイト上では、「かんたん照度計算」というツールで簡易的な計算が可能になっています。
部屋の広さや各面の反射率、照明器具の品番、設置位置、台数などの情報を入力すれば、空間照度のシミュレーション結果が表示されます。設置する位置によっても照度が違ってくるので、条件を変えながらシミュレーションしてみましょう。
まとめ
午前中に明るい光を浴びると、体内時計がリセットされてホルモンの分泌バランスが整うといわれています。逆に夜に明るい光を浴びすぎると、うまく眠ることができません。
このように明るさは健康や快適さと密接に関わっているため、住宅では数値に基づく照明計画が必要になります。「Feu」に限らず、顧客に設置根拠を説明できるよう提案の準備を進めましょう。
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